
陳述書は、裁判や調停の場面で「何が起きたのか」を伝えるための重要な書類です。
ただ、いざ書こうとすると、どこまで具体的に書くべきか、感情を書いてよいのか、形式は決まっているのかなど、迷いやすいポイントが多いと思われます。
陳述書は内容次第で、裁判所に伝わりやすさが大きく変わります。
この記事では、裁判で証拠として扱われることを前提に、陳述書の基本、必須の形式要件、読み手に伝わる書き方のコツ、そして使いやすい例文(3種類以上)を整理して解説します。
最後まで読むことで、必要事項の漏れを防ぎつつ、事実関係を筋道立ててまとめられるようになるはずです。
陳述書は「具体性・時系列・簡潔さ」で評価が変わります

陳述書は裁判で「証拠」として扱われる重要な書類です。
裁判で問題となっている事実関係について、作成者の認識を述べ、証拠の補完や、尋問での聞き漏らし防止、証人尋問の準備などに役立つとされています。
そのため、結論としては、「いつ・どこで・誰が・誰と・何を・どうしたか」を具体的に、時系列で、短い文で書くことが最重要です。
加えて、事実と意見(評価・推測)を分け、相手に知られては困る情報は書かない運用が推奨されています。
陳述書が重要視される理由と、裁判所が見ている観点
陳述書は「証拠の補完」と「整理」に使われます
陳述書は、当事者や関係者が把握している事実を文章化し、裁判所に提出することで、争点の理解を助けます。
口頭での説明だけでは抜け落ちる部分を補い、後から内容を確認できる点が実務上も大きいと考えられます。
各裁判所が様式例を公開しており、更新も続いています
各裁判所のホームページには、陳述書のサンプルや書き方が公開されており、2025年時点でも情報は継続的に更新されているとされています。
運用は事件類型や裁判所で細部が異なる可能性があるため、不明点は申立先(提出先)の裁判所に確認することが推奨されています。
形式不備は「中身以前」でつまずく原因になります
陳述書は内容が大切ですが、まず形式が整っていないと、提出後に修正が必要になる可能性があります。
特に署名・捺印、ページ番号、余白などは、先にチェックしておくと安全です。
陳述書の必須形式と、最初に埋めるべき基本項目
必須の形式要件(一般的に求められやすい点)
陳述書には、次のような形式要件が挙げられています。
- A4用紙・縦置き・横書き
- 左に3cm程度の余白を設ける
- 2ページ以上の場合はページ番号を付ける
- 「陳述書」という標題を付ける
- 署名・捺印(認印で可、朱肉を使う印鑑)をする
裁判所提出書面として読みやすく、管理しやすい体裁に揃える意図があると考えられます。
記載すべき基本項目(テンプレートとして先に配置します)
一般的には、次の項目を冒頭と末尾に配置します。
- 事件番号
- 表題(陳述書)
- 作成日
- 宛先(家庭裁判所名など)
- 申立人(作成者)の署名・捺印
事件番号の書き間違いは起こりやすいため、訴状や申立書、裁判所からの書面で必ず確認してから転記するのが無難です。
伝わる陳述書にする3つの書き方ポイント
日時・場所・金額まで具体的に書きます
抽象的な表現は、読み手が状況を再現できず、評価が分かれやすくなります。
専門家の解説では、例えば次のように具体化することが推奨されています。
「令和7年2月1日、私の自宅で乙川に現金300万円を貸し付け、『年内に返す』と約束された」
このように、日時・場所・金額・約束内容が揃うと、争点の特定がしやすくなります。
時系列で並べ、出来事の因果関係を見える化します
陳述書は、出来事を「点」で書くより、「線」でつなぐ方が伝わりやすいです。
どこで、誰が、誰と、何を、どうしたのかを時系列順に記載すると、事実が明確になるとされています。
一文を短くし、主語と述語を近づけます
一文が長いと、主語・動詞・目的語の関係が不明確になりがちです。
実務的には、一文は長くても3行、基本は1〜2行で「。」を入れて区切る書き方が推奨されています。
「事実」と「意見」を分けると信用性が上がります
事実は観察可能な形で書き、評価は後ろに置きます
陳述書では、事実と意見を混ぜると、全体が主観的に見える可能性があります。
例えば、次のように分けて書く方法が紹介されています。
事実の書き方(例)
AさんがBさんを殴りました。
殴ったとき、バコッという音がしました。
遠くにいた人が振り返っていました。
意見の書き方(例)
以上の状況から、私はAさんがBさんをかなり強く殴ったのだと思いました。
まず事実、その後に意見の順にするだけで、読み手が検証しやすくなります。
説得力を高めるのは「具体的なエピソード」です
反省や努力、被害の大きさなどは、抽象語だけだと伝わりにくい傾向があります。
例えば「本当に反省している」と書くより、行動として確認できるエピソードを書いた方が説得力が増すとされています。
例としては、「毎朝5時に起きて、自分の犯行に関する反省文を書いている」など、継続的行動を示す書き方が挙げられています。
書かない方がよい内容と、避けたいNGパターン
相手に知られて困る個人情報は記載しない運用が推奨されます
陳述書は相手方に開示される可能性があります。
そのため、住所、勤務先、子の通学先など、相手に知られては困る事項は書かないよう注意が促されています。
必要性がある場合でも、裁判所や代理人(弁護士さん)に確認した上で、記載方法を検討するのが安全です。
避けたい陳述書の典型例
- 主観的・感情的な陳述書
- 内容が整理されていない陳述書
- 抽象的不明確な陳述書
感情を完全に排除する必要はないものの、結論を支えるのは具体的事実という前提で整えることが重要です。
陳述書の例文テンプレート(基本形)
以下は、事件類型を問わず使いやすい基本形です。
実際には提出先の裁判所の案内や、事件の性質に合わせて調整してください。
基本テンプレート(例文)
令和○年○月○日
○○裁判所 御中
陳述書
事件番号:令和○年(○)第○号
申立人(原告):○○ ○○
相手方(被告):○○ ○○
1 陳述の趣旨
本件に関し、私が経験し認識している事実について、以下のとおり陳述します。
2 事実経過(時系列)
(1)令和○年○月○日○時頃、私は○○(場所)にいました。
(2)同日、○○さんは○○(行為)をしました。
(3)その後、私は○○(対応・結果)をしました。
3 補足(必要な範囲)
上記のとおり、私は○○と認識しています。
なお、これは私が直接見聞きした範囲の事実に基づくものです。
以上
住所:○○都道府県○○市(※必要な場合のみ)
氏名:○○ ○○ 印
ケース別に使える陳述書の例文(3種類)
例文1:離婚調停での陳述書(婚姻経過と別居まで)
令和○年○月○日
○○家庭裁判所 御中
陳述書
事件番号:令和○年(家イ)第○号
申立人:○○ ○○
相手方:○○ ○○
1 婚姻と同居の経過
私は令和○年○月○日、相手方の○○さんと婚姻しました。
婚姻後は○○市の賃貸住宅で同居を開始しました。
2 問題が顕在化した時期と具体的出来事
令和○年○月頃から、○○さんは帰宅が深夜になる日が増えました。
私は令和○年○月○日、帰宅理由を尋ねましたが、○○さんは「仕事だ」と述べました。
同日、○○さんは私の質問に対して大声で怒鳴り、台所の椅子を蹴りました。
3 別居に至った経緯
令和○年○月○日、口論となり、○○さんは「出て行け」と述べました。
私は同日夜、子どもを連れて実家(○○市)へ移動し、以後別居しています。
4 現在の状況
別居後の連絡は主にメッセージアプリで行っています。
生活費の支払いは令和○年○月分以降、途絶えています。
以上のとおり、私は別居に至った経緯を認識しています。
以上
氏名:○○ ○○ 印
例文2:金銭トラブル(貸金返還)に関する陳述書
令和○年○月○日
○○地方裁判所 御中
陳述書
事件番号:令和○年(ワ)第○号
原告:○○ ○○
被告:乙川 ○○
1 貸付の事実
令和7年2月1日、私は私の自宅で、被告の乙川さんに現金300万円を手渡しました。
手渡しの際、乙川さんは「年内に返す」と述べました。
2 返済状況
令和7年12月31日までに返済はありませんでした。
令和8年1月5日、私は乙川さんに電話し、返済時期を確認しました。
乙川さんは「今は用意できない。来月まで待ってほしい」と述べました。
3 催促の経過
令和8年2月10日、私はメッセージで返済を求めました。
乙川さんから返信はありませんでした。
以上は、私が直接行った貸付と、その後のやり取りに関する事実です。
以上
氏名:○○ ○○ 印
例文3:交通事故の目撃に関する陳述書
令和○年○月○日
○○簡易裁判所 御中
陳述書
事件番号:令和○年(○)第○号
作成者:○○ ○○
1 目撃した日時・場所
令和○年○月○日○時○分頃、私は○○市○○町の交差点付近の歩道にいました。
天候は晴れで、路面は乾いていました。
2 事故直前の状況
私から見て、Aさんの車は交差点に向かって直進していました。
Bさんの自転車は、交差点を横断する方向に進んでいました。
信号の色は、私の位置からは確認できませんでした。
3 衝突時の状況
Aさんの車とBさんの自転車が接触しました。
接触後、Bさんは自転車から倒れました。
周囲の歩行者が数名、事故現場に近づきました。
4 事故後の状況
Aさんは車を停止させ、車外に出ました。
Aさんは「大丈夫ですか」と声をかけていました。
以上は、私が現場で目撃した範囲の事実です。
以上
氏名:○○ ○○ 印
陳述書を提出する前の最終チェックリスト
提出直前は、次の観点で確認するとミスが減ります。
- 形式:A4縦・横書き、左余白、ページ番号、標題、署名捺印
- 基本項目:事件番号、宛先、作成日、氏名
- 中身:具体性(日時・場所・金額)、時系列、短文
- 整理:事実と意見が分離されている
- 安全:相手に知られて困る情報を書いていない
まとめ:陳述書は「読み手が検証できる形」に整えるのが要点です
陳述書は裁判で証拠として扱われる重要書類であり、証拠の補完や争点整理に役立つとされています。
作成では、具体性、時系列、簡潔な短文を徹底し、事実と意見を分けることが基本です。
また、A4縦・横書き、左余白、ページ番号、標題、署名捺印といった形式要件を満たすことが、実務上のつまずきを減らすと考えられます。
各裁判所がサンプルを公開しているため、不明点は提出先の裁判所に確認することも有効です。
不安がある場合は、早めに叩き台を作るのが現実的です
陳述書は、完璧な文章力よりも、事実を落とさず整理する姿勢が重要です。
まずはテンプレートに沿って、出来事を時系列で箇条書きに近い形で書き出し、そこから短文に整えると進めやすいと思われます。
提出先の裁判所の案内と照らし合わせながら、形式と記載内容を確認して仕上げてください。